初期・古代

初期・古代

トランペットが歴史として記録されているものには、今から3000年も前に実証されている、エジプトの考古学的出土品の中に残されている。
これは歴史の古さを物語る。
当時の材質としては、金、銀、青銅のほか、土器、貝、象牙、木、樹皮、竹、瓢箪など、型も種々あり、長さの異なるものもあった。
従っていろいろな調子の楽器があったわけである。
当時これらは主に宗教、政治上の儀式、軍隊や競技などにファンファーレや信号として使われていた。
初期のトランペットの出せる音は、倍音のみに限られていた。
古代の終わりから中世にかけて、楽器の構造・材質などの点では、殆ど進歩がなく、10世紀から11世紀ぐらいに作られた楽器でも、楽器に彫刻するという程度であった。

中世

中世・前半/後半

12世紀に入ると管を接続することが可能になり、非常に長い楽器が作られるようになった。
長い楽器は、調子が低くなることによって、第1倍音ももちろん低くなるので、上の方の倍音が出しやすくなり、簡単なメロディーが演奏できるようになった。
だが、まっすぐ長い楽器では、戦争や狩猟などに用いるには非常に不便なため、14,15世紀に入ると、様々な形に曲げられるようになった。
最初に作られたものは全長が635mmぐらいであったといわれる。
それでも依然として音程的には何の進歩もなく、相変わらず倍音しか出すことができなかった。
しかし後になって、デミルーン(Demilune)・トランペットと呼ばれるものが作られるようになった。
デミルーンとは半月型という意味であるが、ホルンのストップ奏法のようにして、半音の変化を得ることができるものである。
これによって今までの倍音のみの楽器でも、より多くの音が出せるようになった。
一方、10世紀頃ヨーロッパ各地においては、ツィンク(Zink)という楽器が作られるようになっていた。
この楽器は今までの象牙または木でできている管に、穴を開けて倍音以外の音も出せるようにしたものである。
このシステムはペルシアからヨーロッパに流れてきたといわれている。
当時は2〜4つの穴が開けられていたものであったが、15から18世紀の間に、フルートからヒントを得て、表に6つと裏に1つ、合計7つの穴が開けられ、音階の演奏が可能になった。
ツィンクは19世紀まで用いられていた。
16世紀に入って、トロンバ・ダ・ティラルシ(Tromba da Tirarsi/独:Zugtrompete)という楽器ができた。
これはトロンボーンと同じシステムで、スライド・トランペットとも言える。
音程は長3度までしか下げられなかった。
また、クラリーノ(Clarino)は17,18世紀頃ヨーロッパにおいて大変盛んになった楽器で、一見ホルンのように管を巻いて、3つの穴を開け、それを指で操作して、音程を変えることができるものである。
1760年には、ドイツ人のケールベルがクラッペン・トランペットを発明した。
これはクラリーノとは違って、トランペットの形をしていて、しかも穴が4つ開けられており、そこに木管楽器のような鍵(キー)が付いている。
ハイドンのトランペット協奏曲はこのような楽器で、穴が6つ開けられたもののために書かれた。
このように楽器の進歩と共にトランペット芸術も盛んになり、多くの作曲家によってトランペットの曲が書かれるようになり、特にバッハ、ヘンデルらによってトランペット音楽は最高潮に達したといえる。
18世紀までは宮廷の儀礼用として、トランペットがとくに重視され、イギリスではヘンリー8世が14人、エリザベス女王が10人のトランペット奏者を抱えていたほどであった。
またドイツにおいては一般市民がトランペットを加えた音楽を演奏する時には、特別に許可をもらわねばならなかった。
そして宮廷に抱えられたトランペット奏者達は、特に高い地位を与えられていた。

近世

19世紀初頭、ドイツのブリューメルが、カステン・ヴェンティル(Kasten Ventil)を発明した。
この楽器は2つのヴァルヴから出来ていて、第1ヴァルヴは1音、第2ヴァルヴは半音下げることが出来た。
1825年にシェスターが作ったカステン・ヴェンティルは、すでに3つのヴァルヴが付いている。
このヴェンティルとはドイツ語で弁のことである。
さらに1827年にはフランス人のラバイェによってピストンが発明された。
また、ウィーンではウールマンによってウィンナー・ヴェンティルが発明された。
1832年にウィーンで、ヨセフ・リードルがカステン・ヴェンティルを改良し、初めてロータリー式を発明した。
一方ベルリンでは1857年にモーリッツがプンペン・ヴェンティルを発明し、これはベルリナー・プンペンと呼ばれた。
そして1839年にパリにおいて、ペリネが現在のものと殆ど同じ3本ピストンのトランペットを発明した。
一応形の上では完成された楽器といえたが、まだ問題点があったらしく、ベルリオーズやワーグナーは、この楽器の発明後もあえてナチュラル・トランペットを使って作曲している。

近世

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